MATCH DAY PROGRAM|2026.11.8 vol.07
2026.11.8

ゴールへの執着心で現状打破へ 世界基準を身につけたコンダクター
頼もしき中盤のコンダクターが、世界基準の逞しさを携えてチームをさらなる高みへと導いている。ボランチを主戦場に、センターバックやウイングバック、前線まで高水準でこなすユーティリティ性と、常に戦局を俯瞰する高いサッカーIQで攻守に貢献するMF瀬野有希。9月中旬から行われたアジア競技大会では、なでしこジャパン(日本女子代表)に初招集され、過酷な連戦を戦い抜いて金メダルを獲得した。日の丸を背負う重圧と誇り、そして一戦にかける研ぎ澄まされた勝負への執着心を肌で感じて帰還。より一層チームを勝たせる存在としての自覚を強めている。
エルフェンは現在リーグ戦で3連敗中と苦しい局面にあるが、悔しさをバネに選手たちは前を向いている。今節、クラブ史上初となる多摩市立陸上競技場でのホームゲーム、サンフレッチェ広島レジーナ戦を迎えるにあたり、連敗ストップにかける強い決意、代表活動で得た貴重な財産、そして母としてピッチに立ち続ける強い覚悟とサポーターへの感謝の想いをじっくりと語ってもらった。
今節はエルフェンとしては初めての多摩市立陸上競技場でのホームゲームとなります。
私自身も多摩で試合をするのは初めてです。いつものホームスタジアムとはまた違った環境になりますが、そこも含めて新鮮な気持ちで楽しみたいです。遠い会場まで来てくださるファン・サポーターの皆さんのためにも、ホームで勝利を届けたいと思っています。リーグ戦ではここ数試合、我慢の戦いが続いています。難しい状況に対する取り組みと、ご自身の想いを教えてください。
なんとかこの流れを断ち切りたいという気持ちがチーム全員に強くあります。特に前節は無得点で終わってしまったので、得点にはこだわりたいところ。どれだけ良い時間帯を作れていても、最後にゴールをこじ開けなければ勝点3を掴むことはできません。積極的に攻撃に関わり、思い切ってシュートしたり、ラストパスの質を突き詰めたりして、ゴールへの執着心を持って臨みたいです。シーズン序盤は調子も良く、開幕からここまでハイレベルな試合を続けています。樋口靖洋監督が掲げる「主体性を持ってプレーする」という部分に関して、手ごたえを感じているのではないでしょうか。
はい、攻守ともに主導権を奪って試合を進めていくという部分に関しては、より細かい局面までチームとしての共通認識ができてきたと感じています。攻撃に関してはポゼッションのところで、一人一人がボールに関わる意識を高く持つこと、全員が受ける準備を怠らないことを樋口監督から常に言われています。9月14日から10月2日にかけて開催されたアジア競技大会では、なでしこジャパンに初選出され、見事に金メダルを獲得しました。その経験を振り返ってください。
どの対戦相手も、国を背負って戦う執念や気迫は本当に凄まじかったです。球際での激しさ、一歩足を踏み出す勇気、体を張ってゴールを守る執念においては、絶対に引いてはいけないと強く感じました。フィジカルの強さや足の速さといった身体能力も、日本人選手とはまた異なる独特の「重み」があって、ぶつかり合った瞬間に「これが世界基準の強度なんだ」と強烈に実感しましたね。決勝の北朝鮮戦では1点を追う苦しい展開からの出場でしたが、不思議と負けるイメージは全く湧かなくて、「絶対に追いついてひっくり返せる」という確信めいたものをチーム全体から感じていました。厳しい戦いを制して表彰台で金メダルを首にかけてもらった瞬間は、本当に嬉しかったですし、ホッとした気持ちで胸がいっぱいになりました。
日の丸を背負って戦った国際大会の舞台で、特に肌で感じた「世界との差」や学びは何でしたか?
やはりプレーの強度とスピード感、そして要求される基準の高さですね。狩野(倫久)監督の言葉で印象に残っているのは、「そのパスは本当に相手を崩すための最適なパスだったのか」「味方の右足に出せていれば、その先でシュートまで持ち込めたのではないか」という、プレーの質に対する徹底的なこだわりでした。普段なら味方から「ナイスシュート!」と声が飛ぶような場面でも、世界トップ基準では決して満足しない。「結果としてシュートで終わったけれど、ゴールに繋がらなかったのはなぜか考えてみよう」という極限の細部まで突き詰める姿勢には、本当にハッとさせられました。
普段のイメージトレーニングや、試合前に参考にしている選手などはいますか?
センターバックでプレーするイメージを膨らませるときは、マンチェスター・シティの女子チームに所属するアレックス・グリーンウッド選手(イングランド女子代表)の動画をよく見ています。左利きの選手なんですけど、ビルドアップの正確さやパスの配球が本当に素晴らしくて大好きなんです。ボランチのときは、男子のアーセナルでプレーするデクラン・ライス選手ですね。キックの精度はもちろんですが、中盤で相手の攻撃の芽を摘み取る潰しの速さや、セカンドボールの回収力、対人での圧倒的な強さは見ていて本当に勉強になります。試合前にはそうしたトップ選手の好プレー集を見て、頭の中に良いイメージを焼き付けてからピッチに入るようにしています。
瀬野選手は、出産を経て復帰されました。時間の使い方やコンディショニングについては、どのように過ごされていますか?
家ではどうしても子ども中心の生活になりますね(笑)。子どもがお昼寝をしている時間や夜に寝かしつけた後の時間を見つけて、試合の映像をチェックしたり、体のケアを行ったりしています。休みの日は子どもと一緒に出かけることが多いですね。サッカーでうまくいかないことがあっても、子どもの顔を見ると一瞬で嫌なことを忘れられるくらい可愛くて、本当に私にとってかけがえのない時間になっています。子育てしながら現役を続けることの大きな喜びと同じくらいの覚悟を感じます。
子どもが欲しいという想いは以前からクラブにも伝えていましたし、出産を理由に引退するつもりは最初からありませんでした。「出産したからパフォーマンスが落ちた」とは絶対に言われたくなかったですし、復帰する選手がまだ少ない日本の女子サッカー界の中で、自分がピッチで活躍し続けることで、後輩たちに「結婚や出産を経験しても、こうして長くサッカーを続けられるんだよ」という道を示したい、選択肢を広げてあげたいと強い覚悟を持っています。アジア競技大会期間中も、両親や夫がサポートをしてくれたからこそ、サッカーに全力で集中することができました。家族の支えには感謝してもしきれません。今節対戦するサンフレッチェ広島レジーナの印象について教えてください。
広島さんは攻守のバランスが非常に整っていて、選手個々のクオリティもWEリーグ屈指の難敵です。ビルドアップの上手いセンターバックや、長短の正確なキックを持つ選手、両サイドには強力なドリブラーがいて、前線には決定力の高いストライカーが揃っています。以前対戦した際もショートカウンターから失点してしまった苦い経験があるので、攻守の切り替えのスピードとリスク管理には細心の注意を払わなければいけません。相手に隙を与えず、自分たちが主導権を握り続けられるかが勝負の分かれ目になると思っています。アジア大会を共に戦い、金メダルを勝ち取った選手らとの対戦にも注目が集まりますね。
代表で一緒に戦ったチームメイトだからこそ、彼女たちのストロングポイントや怖さは身をもって知っています。味方だったときは本当に心強かったですが、今回は敵として対峙することになるので、絶対に負けたくないですね。お互いの手の内を知り尽くしているからこそ、相手の良さを消し去り、マッチアップで上回ってチームを勝利に導きたいです。最後に、いつも熱い声援を送り続けてくれるファン・サポーターの皆様へメッセージをお願いします!
エルフェンのサポーターの皆さんは、チームが勝っているときはもちろん、苦しいときや負けが続いているときでも、常に前を向かせてくれる温かく熱い言葉を掛け続けてくださいます。そのポジティブな応援の温かさは、間違いなく日本一だと誇りに思っています。チームは3連敗中ですが、選手たちは誰ひとり下を向いていませんし、なんとしてもこの多摩で流れを断ち切るんだという強い覚悟を持っています。前節の無得点という悔しさをゴールという結果で晴らし、多摩といういつもと違う会場まで来てくださるファン・サポーターの皆さんのためにも、絶対にホームで勝利を届けたいです。スタジアムで皆さんと一緒に笑顔で勝利を分かち合えるよう、チームのために全力で走り、戦い抜きますので、熱い応援をよろしくお願いします!
取材・文=砂坂美紀(FOOTBALL ZONE)

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